都立霊園初の小平霊園の樹木葬。
開苑から10年、今も人気を集める理由とは?
2021年現在、8箇所ある東京都の霊園(青山、雑司ケ谷、谷中、染井、多磨、八柱、小平、八王子)の1つである小平霊園。
同年、東京都民の皆さまの「死後は安らかに自然に還りたい」という願いを背景に、都立霊園では初となる共同埋葬型の樹林墓地が誕生。全国ネットのニュースでも取り上げられるほど話題になりました。
2012年7月に行われた公募では、500体の募集に対して16倍を超える応募がありました。
その後も公募は行われていますが、毎年高い倍率の応募が続く中、2014年には個別埋葬型の樹木墓地も誕生しました。
開園から10年近く経つ今も人気を集める理由を確かめに、高田馬場駅乗り換えで西武新宿線に乗って小平霊園へと向かいました。
1948年に開園した、緑あふれる小平霊園
新宿から西へ23km、西武新宿線と新青梅街道にはさまれた土地にある小平霊園は、総面積65.3㎡(東京ドーム約14個分)という広大な面積を誇ります。
全体の約半分が墓地として利用されており、残り半分は園路や緑地として整備されています。
公園として利用される方や、愛犬のおさんぽなどに使われる方も見られ、都内とは思えないほど自然豊かな場所です。
墓地というと、墓石が並んでいるイメージもあるものですが、歩くだけでも心が穏やかになる雰囲気は、お墓参りする方にとっても居心地が良いのではないでしょうか。
園内には、ベンチなども数多く設置されていますので、歩き疲れたらゆっくり休むこともできます。
小平霊園の正門からすぐの場所にある管理事務所では、48名の著名人墓地の区側番が記された案内図を配布していますので、霊園の見学も兼ねて散策してみるのもよいかもしれません。
北原白秋・西條八十と並び日本を代表する三大童謡詩人として謳われ、『赤い靴』『シャボン玉』などの名作を残した野口雨情や、映画化もされた『二十四の瞳』の作家・壺井栄とその夫である詩人・繁治などをはじめ数多くの著名人が眠ることでも小平霊園は知られています。
アクセス情報
住所:東京都東村山市萩山町1-16-1
電車
- 西武新宿線「小平駅」約5分
- 最寄り駅である西武新宿線「小平駅」から、300mほどのケヤキ並木を歩くと小平霊園へ到着します。
自動車
- 新青梅街道沿い
- 自動車で通ることができる園内通路も整備されており、路肩に駐車してお参りすることができます。
〈開門・閉門時間〉(樹林墓地、樹木墓地)
- 夏期(4月1日~9月30日) 開門 7:30/閉門 18:00
- 冬期(10月1日~3月31日) 開門 7:30/閉門 16:30
シンボルツリーが植えられた公園型の樹林墓地・樹木墓地
小平霊園にある樹林墓地・樹木墓地の敷地は、正門を入って左手にある管理事務所から歩いてすぐの場所にあります。
樹林墓地・樹木墓地と聞くと、豊かな自然の中で眠る里山型の樹木葬墓地をイメージされる方も多いかもしれませんが、小平霊園は管理が行き届いた公園タイプの樹木葬墓地です。
入口が門で区切られてた834㎡の敷地の中央に広がる芝生にはコブシ、ヤマボウシ、ナツツバキ、ネムノキ、イロハモミジなどの樹木がシンボルツリーとして植えられており、その地下が埋蔵施設となっています。
敷地内に植えられた樹木は多くありませんが、小平霊園全体の樹木が借景となり、豊かな緑を感じられる点は、都市において「自然の中で眠りたい」という想いを叶えるには十分かもしれません。
樹林墓地・樹木墓地の周囲は石畳の歩道に囲まれているため歩きやすく、各所に設置されたベンチで休憩することもできます。
小平霊園 樹林墓地・樹木墓地の違いについて
2021年現在、小平霊園の樹木葬墓地は、樹林の下に設けられた納骨室に他の方の遺骨とともに埋葬する樹林墓地と、埋蔵袋に入れた遺骨を個別に埋葬する樹木墓地の2種類があります。
門で区切られた同じ敷地内に樹林墓地・樹木墓地があり、献花台は隣り合っています。
樹林墓地(共同埋蔵)
シンボルツリーがある芝生の地下に、遺骨を埋葬するための直径1m50cm、深さ2mほどの「共同埋葬施設」が27箇所に設けられています。遺骨で納骨する場合と、粉骨した遺骨を納める場合で費用が異なることが特徴です。
埋蔵方法
地面の下に設置されたカロートに、他の方のご遺骨といっしょに合葬されます。
※埋蔵場所は指定できません。
面積
約830㎡(地下埋蔵施設)
埋蔵予定数
約10,700体
生前申込の有無
有
使用料
遺骨 1体134,000円 2体268,000円
粉骨 1体44,000円 2体88,000円
樹木墓地(個別埋蔵)
個別に埋蔵するため、樹林墓地と比較すると使用料が高くなります。また、遺骨をすでに持っている人のみ申し込むことができ、生前申込は受け付けていません。
埋蔵方法
樹木の周辺に穴を掘り、埋蔵袋に入れたご遺骨を土に接する形で「個別」に一体ずつ埋蔵します。カロートは設置されていません。
※埋蔵場所は指定できません。
面積
約650㎡
埋蔵予定数
約2,880体
生前申込の有無
無
使用料
遺骨 1体194,000円 2体388,000円
参考リンク)令和2年度申込みのしおり
毎年5月4日(みどりの日)に行われる合同の献花式
公営墓地である小平霊園では、宗教・宗派不問です。
献花や焼香は参拝広場に設けられた献花台で行い、供物や卒塔婆などを持ち込むことはできません。
毎年、5月4日(みどりの日)には、樹木の下に眠っている方々に花を供える樹林墓地・樹木墓地合同での献花式が行われます。ゴールデンウイーク期間ということもあり、多くの方がお墓参りに訪れ、色鮮やかな美しい花々が園内を彩ります。
最寄り駅である小平駅から歩いて行ける距離の近さも、小平霊園の樹林墓地・樹木墓地が人気を集めている理由なのでしょう。
※2020年は、新型コロナウイルス対策のため献花式は中止となり、代表献花が行われました。
参考リンク)樹林・樹木型合葬埋蔵施設、代表献花の様子について
例年、6月中旬から7月上旬が抽選申し込み期間
都立霊園は比較的費用が安いこともあり、基本的に抽選になることが特徴です。
例年、6月中旬から7月上旬が抽選申し込み期間とされており、8月頃に抽選が行われます。
小平霊園の場合、生前申込が可能な樹林墓地は抽選倍率が高く、令和2年度(2020年)には14.4倍、生前申込ができない個別埋葬の樹木墓地は1.1倍でした。
〈樹林墓地・樹木墓地 抽選応募条件〉
○樹林墓地・樹木墓地 遺骨申込
1.都内に3年以上継続して住んでいること
2.現在、遺骨があること
3.遺骨に対して、祭祀の主宰者であること(下記3点のいずれかを行った者)
・葬儀の喪主を務めた
・法事の施主を務めた
・役所に死亡の届けをした、あるいは火葬の申請をした
○樹林墓地 生前申込
・都内に3年以上継続して住んでいること
都立霊園では、年度によって募集される区画が異なり、令和3年度(2021年)は樹木墓地(遺骨申込のみ)300体の募集となっています。
参考リンク)「TOKYO 霊園さんぽ」
都立霊園ならではの安心感と、価格の手ごろさが魅力
1999年、日本国内では初とされる樹木葬墓地が岩手県一関市の臨済宗大慈山祥雲寺に誕生してから20年超。
都市における墓地用の土地不足や自然回帰ニーズを背景に、樹木葬墓地も一般的になってきました。
東京都立小平霊園に共同埋葬の樹林墓地が開設された2012年当時と比較しても、都内における樹木葬墓地の選択肢は大幅に広がっています。
そうした背景の中、今も樹林墓地の抽選申し込みが高い倍率を維持している理由として、
○民営ではなく、都営であることの安心感
○費用の安さ(4万4,000円~13万4,000円)
○都心からのアクセスのしやすさ
3点が挙げられるのでないかと思います。
一方、生前申込ができない個別埋蔵型の樹木墓地は抽選倍率が低い傾向もあります。
都内在住で、「都内に(できれば安く)樹木葬墓地を持ちたい」という方は、ぜひ天気の良い日におさんぽも兼ねて、見学してみてはいかがでしょうか。歩くだけでも心地よい、緑あふれる空間です。
※小平霊園の樹林墓地・樹木墓地は募集がない年もあるため、その点はご注意いただければと思います。