岩手県遠野「いのちを還す森」 いつか自分が眠る森の風景をつくる

「遠野 現地見学会」1泊2日 レポート
岩手県遠野市でハヤチネンダが運営する「いのちを還す森」埋葬プロジェクト。
「遠野 現地見学会」は、東京から日帰りで参加できる日程と、
1泊2日で馬事体験や森をつくる活動に参加できる日程があります。
樹木葬レポート「いのちを還す森」 現地見学会〈後編〉では、
樹木葬レポート「いのちを還す森」 現地見学会〈前編〉に引き続き、
「遠野 現地見学会」1泊2日のレポートをまとめさせていただきます。
クイーンズメドウ・カントリーハウスに宿泊
「遠野 現地見学会」1泊2日の場合は、別途宿泊費や食事代がかかります。
詳細はHPをご確認ください。

お茶っこの後は、宿泊する部屋に荷物を置き、夕食まで自由時間。
今回は空き室がある日程でしたのでクイーンズメドウ・カントリーハウスに宿泊しましたが、遠野市内のホテルに泊まることも可能です。
ハヤチネ山ノ上倶楽部の皆さんと夕食

森をつくる「森入り」に参加しているハヤチネ山ノ上倶楽部の皆さんとともに夕食をいただきました。青森、宮城など東北在住の方、都内在住の方、クイーンズメドウ・カントリーハウスの活動をきっかけに都内から移住された方など、様々な経歴を持つ方が参加されていました。
NHKの番組などでも「いのちを還す森」や「森入り」の活動が紹介されたこともあり、参加者が増えているそうです。

宿泊したゲストルームには、バス・トイレがあり、シャンプーやボディソープ、タオルなどもあるため、快適に過ごすことができました。
ハヤチネ山ノ上倶楽部とは?
入会費無料・月3,000円の会費で、遠野での「森入り」、東京で開催される交流会「七日茶会」、宗教学者、哲学者など講師を招いたオンラインで勉強会などの参加することができる会員制倶楽部です。
お墓を「買う」から「参加する」をスローガンに掲げる「いのちを還す森」埋葬プロジェクトの核となる団体活動でもあります。
会員の8割以上は女性で、40~60代の首都圏在住者が多いとのこと。なかなか現地には行けなくても、東京の「七日茶会」やオンライン勉強会に参加することで、同じ想いを持つ人とつながるとともに、遠野の自然とつながることができる場として活用される方もいらっしゃるそうです。
「いのちを還す森」周辺の環境整備を行う「森入り」に参加
朝食をいただいた後、アウトドアで活動する準備をしてクイーンズメドウ・カントリーハウス入口に集合。

希望する場合は、長靴や軍手を借りることができます。
車に乗って、「いのちを還す森」近くの駐車スペースへ移動。「森入り」参加の前にクイーンズメドウ・カントリーハウスが放牧している馬の世話をする馬事体験させていただきました。

林道を歩いていき、牡馬2頭が放牧されているエリアへ。馬たちが高原に上がっている時期(6月〜10月)以外は、クイーンズメドウ・カントリーハウスの敷地内で過ごしているとのことです。
森に自然の草が少ない時期は、購入して運んできた牧草を馬に給餌します。担当の方に色々とお聞きしながら、牧草を馬のそばまで運ぶ作業を手伝わせていただきました。

「森の中に馬がいて、馬がどうしたら過ごしやすいかを考えて行動するのは楽しいものです。馬がここにいることが、私にとって森に来る理由ですね」という馬事担当の方は話します。

牧場などで馬を見たことはありましたが、自然の中で馬と間近で触れ合う時間は貴重な体験となりました。
いつか自分が眠る森を、仲間たちと整備する「森入リ」
ハヤチネ山ノ上倶楽部の定例活動である「森入リ」は、森の中をきれいに整えたり、人が通れるくらいの道をつくったりと、参加する日程によって活動が異なります。その日、その場所でしかできない体験をする時間とも言えます。
馬事体験の後は、メンバーの皆さんといっしょに、「森入リ」に参加させていただきました。この日は、昨日の続きで「いのちを還す森」近くの駐車スペースを拡張する作業を行いました。

ランドスケープの専門家の方にアドバイスをしていただきながら、石を積み、石垣づくりを進めます。

その後、森から枯れた笹の木を集めてきて、束にして、石垣の上に積み上げていきました。「殺風景な石垣が和風旅館風になりましたね」などとメンバーの方と語り合いながら、楽しい時間を過ごすことができました。
個人的には、数百年前に築かれた城の石垣を見て、「長い歳月を経ても崩れないのは素晴らしい技術だな」と感じていましたので、岩手県遠野の地に自分たちが築いた石垣が残っていくことは感慨深さもありました。少し大げさかもしれませんが。
クイーンズメドウ・カントリーハウスで馬との時間

「森入リ」体験をさせていただいた後、車でクイーンズメドウ・カントリーハウスに戻り、馬と触れ合うプログラムに参加。クイーンズメドウ・カントリーハウスの成り立ちや、馬との関わり方などをお聞きして、実際に馬と一緒に歩く体験をさせていただきました。

「大切なのは主導権を握るのは必ず人間の側であること。お互いにコミュニケーションを取りながら、信頼関係を築いていくことが重要です」と徳吉さんは語ります。

馬たちが高原に上がっている時期(6月〜10月)以外は、クイーンズメドウ・カントリーハウスの馬房で3世代3頭の雌馬が仲良く過ごしています。

馬の頭からつながるロープホルターという紐を持ち、舌打ちなどでコミュニケーションを取りながら馬と歩いていきます。無理に引っ張るのではなく、意思を伝えることで付いてきてくれるのだそうです。
最初はこちらの緊張感が伝わったのか動いてくれませんでしたが、リラックスして接すると一緒に歩いてくれました。
昼食を食べて、自由時間。そして、JR遠野駅で解散

午前中の活動が終わり、道具を片付けてから昼食をいただきました。「森入り」で一緒に作業をした皆さんと話しながら食事をするのも楽しい時間です。
「お墓を買うのではなく、みんなで同じ釜のごはんを食べて、みんなでいつか自分が眠る森をつくっていく」という、今井代表の言葉の意義がわかったような気がしました。

馬たちが高原に上がっている時期(6月〜10月)は、重要文化的景観の一つに指定されている荒川高原へ行くそうです。暑い夏が終わる秋頃がいい時期とのことでした。
電車の時間に合わせてJR遠野駅までお送りいただき、1泊2日の「遠野 現地説明会」は解散となりました。遠野の自然の中でしか体験できない時間を過ごせましたので、興味がある方はぜひ参加してみてはいかがでしょうか。
毎月七日に東京・新宿合羽坂で開かれる「七日茶会」

「いのちを還す森」プロジェクトに興味はあるけれど、東京近郊に住んでいてなかなか岩手県までは行けないという方に向けて、毎月七日に東京・新宿合羽坂で「七日茶会」が開催されています。
「七日茶会」は、山ノ上倶楽部の会員が気軽に集えるカフェのようなサロンのような、大人の居場所です。心地よいテラスで、お茶やお菓子を片手に、会員同士でおしゃべりをしたり、ちょっとしたイベントをしたり。もちろん、一人静かにゆったりすることもできます。
日時 毎月7日 13時から17時
場所 新宿区市谷仲之町2-10 合羽坂テラス#2
※都営新宿線 曙橋駅 A3出口より徒歩6~7分
生きている時間を楽しみながら、いつか眠る森を育んでいく
お墓を「買う」から「参加する」へ。をコンセプトとする「いのちを還す森」埋葬プロジェクト。いつか自分たちが永眠する遠野の森を維持する「森入り」をはじめ、会員同士の交流の場である東京・新宿合羽坂開催の「七日茶会」、講師を招いたオンラインイベントなど、生きているうちに参加できる活動が多いことは特徴的であり、面白さを感じました。
既にあるお墓を探すという発想ではなく、今ここで生きている時間を楽しみながら、遠野の森を育み、未来へつないでいく「いのちを還す森」。
「いつもは忙しなく働いている中で、仲間と共に自分がいつか眠る森をつくる時間は生きがいでもあります」遠野から自宅に戻って、参加者の方が話していた言葉を思い出しました。