開発で失われた房総の森を、豊かな森に戻していく樹木葬
公園タイプ(ガーデニング型・シンボルツリー型)の樹木葬墓地に対して、植樹を行うことで長期的に樹林をつくることを目指す樹林型の樹木葬墓地は、環境保全や自然保護の意味合いが強い墓地と言えます。
その中でも、2016年に環境団体である公益財団法人 日本生態系協会により開設された「森の墓苑」は、“かつて開発で失われた森を再び豊かな自然の森に戻す自然再生活動のための樹木葬墓地”として注目されている墓苑です。
JR外房線「茂原駅」発の見学会に参加し、千葉県長生郡長南町にある「森の墓苑」を訪問しました。
公益財団法人が運営する、自然再生を目的とした樹木葬墓地
「森の墓苑」は、持続可能な自然と共存する美しいまちづくり・くにづくりを提案する組織である、公益財団法人 日本生態系協会が運営する樹木葬墓地です。
同協会は、主に会員からの寄付金で自然の保護や回復を目的に土地を購入するトラスト運動を展開する環境保護団体で、生物多様性保全に関する議員提言、エコロジカルネットワークの行政提案、ビオトープの普及など幅広い活動を行っています。
2019年に永眠された女優・八千草薫さんが長年にわたり理事を務められたことでも知られています。
房総半島の中南部に広がる房総丘陵の一画に位置する「森の墓苑」はかつて土砂採掘場だった場所で、バブル崩壊後に草木一本生えない荒れ地として放置されていました。この跡地を同協会が自然再生の観点から取得し、自然の森を取り戻すことをコンセプトに開苑されたのです。
「一度、表面の土壌を失い、草木が生えない荒れ地になってしまうと自然の力だけで回復することが難しくなってしまいます。そこで土壌を再生し、房総丘陵に生育する樹木や草木を植えることで、本来の自然の森へと戻す取り組みを進めています」と担当の方は話します。
50年かけて再び豊かな自然の森に戻していく
2016年の開苑から植樹が進められており、開苑から半世紀後にあたる2067年には敷地全体を周囲と一体になった自然の森に戻すことを目的としています。
「森の墓苑の周囲約2ヘクタールの森もトラスト地として取得しており、墓苑と同様に美しい森として将来にわたって守り続けることを目指しています」(担当者)
自然再生につながる樹木葬に共感し、「亡くなった後は自然に戻りたい」という思いから、生前に契約されて植樹される方も多いそうです。
現在は区画ごとにネームプレートが置かれており、その場所で墓参することができますが、2067年以降に区画全体が森になった際には入り口から参拝することになります。
将来的には各区画に対してではなく、森全体に対してお墓参りをする形になるため、その点はご家族との相談が必要になるかもしれません。
アクセス情報
月1回開催される現地説明会が便利
自家用車をお持ちでない方の場合、月1回を目途に開催されている現地説明会への参加すがおすすめです。JR外房線「茂原駅」集合、無料で送迎していただけます。また、契約された方は墓参する際に同乗することも可能です。
※管理人が常駐していないため、事前予約しなければ墓苑内に入れない場合もありますのでご注意ください(2022年現在)。
住所
- 千葉県長生郡長生郡長南町市野々815−2
電車
- JR外房線「茂原駅」からタクシー約25分
- いすみ鉄道「城見ヶ丘」からタクシー10分
自動車
- 圏央道「茂原長南IC」または「市原鶴舞IC」より車で15分
バス
- 小湊鉄道路線バス
- 茂原駅南口-植生沢 約30分
- 茂原駅南口-長南営業所 約25分
- ※最寄りのバス停(埴生沢、長南営業所)までは、無料のスタッフ送迎(要事前予約)有
合葬墓と個別墓から選択可能
「森の墓苑」では、房総丘陵に自生する木をシンボルとして周りを囲む「合葬墓」、個別区画に対して房総丘陵に自生する木を植える「個別墓」から選択することができます。
墓苑全体は階段状に大きく3エリアに分かれており、眺めの良い上の区画へ行くにつれて埋蔵管理委託料が上がる形式となっています。また、3エリアそれぞれに合葬墓と個別墓があることも特徴です。
シンボルツリーを囲む合葬墓
3つの合葬墓には予め1本のシンボルツリーが植えられており、同じ区画の方と共有する形式です。下段に位置する「こなら」の埋蔵管理委託料が最安で約30万円となっています。
中段の「やまざくら」、上段の「りんどう」と上の段に行くにつれて料金が上がっていきます。
複数の人が一緒に埋葬される一般的な合葬墓とは違い、50cm四方の区画に1名様の遺骨を埋葬することが森の墓苑の特徴です。好きな場所を選べますので、ご家族や友人と隣りの区画に眠ることも可能です。
「こなら」のみ、千葉県長南町のふるさと納税で申し込みすることができます(2022年現在)。市町村公認という面からも、信頼できる樹木葬墓地と言えるかもしれません。
21種類の樹木から選べる個別墓
約1.5㎡の区画に1本の木を植樹できる個別墓には、原則2名様までの遺骨が埋葬されます。3名様以上の埋葬をご希望の方はご相談くださいとのことです。
植樹する木は、やまつつじ、えごのき、やぶつばき、さんしょう等の低木14種、こなら、くり、やまざくら等の高木7種から選ぶことができます。
高木を希望する場合は、2区画分を使用する高木区画から選択することになり、原則4名様まで入ることが可能です。
埋蔵管理委託料は、下段に位置する「ひばり」が最安で約66万円となっています。高木区画(約3.0㎡)は標準区画(約1.5㎡)の倍となる他、「せきれい」「うぐいす」「みそさざい」と上の段に行くにつれて料金が上がっていきます。
生前契約、ペットとの埋葬も可能
保証金と生前管理料はかかりますが、「森の墓苑」では生前契約をすることもできます。生前に契約することにより、個別墓の区画に樹木リストの中から好きな樹木を植えられることも好評とのことです。
見学に訪れた日も、生前契約された区画に苗木を植える方がいらっしゃいました。いつか自分が眠るお墓に好きな木を植えられるのは、当苑ならではの魅力ではないでしょうか。
また、全ての区画でペットを一緒に埋葬することができる点も人気を集めているそうです。
ご遺骨の埋葬と同時の場合は無償で、別の場合は1頭約2万円の埋葬料がかかります。また、ペットのみでの契約はできない点にはご注意ください。
好きな木の下で眠ることができる
樹木葬を検討されている方の場合、「好きな木の下で眠りたい」と考えている方も多いものではないでしょうか。そういった観点から、房総丘陵に自生する樹木リストの中からシンボルツリーを選べる同苑の個別墓は人気を集めています。
また、契約された方々を中心に春の植樹草会、夏の長南ホタル観賞ツアー、秋の虫聴き体験など、緑豊かな地域ならではのイベントが開催されることも、四季を感じる楽しさにつながるっているそうです。
2067年を目途に50年の歳月をかけて、ゆっくりと房総の豊かな森に成長していく「森の墓苑」。樹木葬墓地の購入を通して、50年後、100年後の森づくりに貢献していけることは、多くの方から共感を得ています。自然を愛する方は、ぜひ一度訪れてみてはいかがでしょうか。
新型コロナウイルス感染症対策として、リモート現地見学も実施中です(2022年現在)。
森の墓苑の口コミレビュー