少子高齢化で跡継ぎがいなかったり、自然に還るというコンセプトに賛同して永代供養型の樹木葬への関心が高まっています。
樹木葬や散骨は自然に還る「自然葬です」が樹木葬と散骨は埋葬方法が異なります。
樹木葬は従来型の石塔の代わりに樹木を墓標にします。
ですから、墓地・埋葬法に基づいて許可を得た場所、区画に埋葬します。
散骨は違法ではありませんがグレーゾーンですので専門の業者に頼む、節度をわきまるなど対策を講じて思わぬトラブルを避けましょう。
埋葬場所のマナー
樹木葬を考える上で覚えておくとよい「埋葬に関する法律」が2つあります。
1つ目は遺骨を墓地以外のエリアに埋葬してはいけないことを定めている「墓地埋葬法」です。
許可の無い場所に勝手に遺骨を埋葬してはいけないということです。
2つ目は刑法190条に定められる「死体遺棄在」です。
なんだかものすごく重大な事に感じられますね。
死体遺棄罪では死体や遺骨を遺棄する事を禁じています。
この2つの法律により、許可されていない場所に遺骨を埋めたり撒いたり置いたりすると遺棄とみなされて処罰の対象になる事があります。
マナー違反どころか法律違反になってしまいます。
里山の自然に還りたいからといって、自分の思い入れのある場所や憧れの場所に勝手に遺骨を埋葬してはいけないということです。
実際におこったトラブルとして、父親の遺骨を自分の庭に埋めてしまったケースがあります。
生前に時間をかけて整備した思い入れのあるイングリッシュガーデンで自然に還って眠りたいというのが故人の願いだったとはいえ、息子が法を侵してしまっては故人もうかばれません。
山での散骨にしても樹木葬にしても、墓地として許可を得ているところを選べば埋葬に関する法律に抵触する心配はありません。
環境維持のマナー
樹木葬には里山全体を墓苑とみなした「里山型」と霊園などに樹木葬の区画を整備した「公園型」があります。
環境維持のトラブルは主に後者の公園型でおこります。
公園型の樹木葬には個人あるいは夫婦単位で1本の樹木を墓標として植える「樹木墓地」と複数の樹木あるいは1本のシンボルツリーの下に複数の遺骨を合葬する「樹林墓地」があります。
公園型の場合はたとえ樹木墓地であっても環境やコンセプトに適した、その墓地であらかじめ決められた木あるいは数種類の選択肢から墓標になる樹木を選びます。
日本人にとって馴染みの深い特別な木として桜は一番人気です。
桜をシンボルツリーにしてその周囲に遺骨を合葬する桜葬では桜の花が咲くころに合祀祭を開くところもあります。
桜をシンボルツリーにした樹木葬で実際にあったトラブルは「お花見」です。
お酒の好きだった故人を偲んでの行いも度を越すと他の参拝者の迷惑になります。
樹林墓地・樹木墓地はあくまでもお墓です。
故人への敬意と他の参拝者への配慮を忘れてはいけません。
桜の他に樹木葬によく使われるのはヤマツツジ、ハナミズキ、サルスベリ、ウメモドキ、エゾアジサイなどの潅木や、モミジ、ムシカリ、ツバキ、ユキヤナギや一年中緑が楽しめる常緑樹を植えるところもあります。
樹木葬の墓地では周辺環境、価格、管理方法などから植える樹木を決めています。
樹木葬に使われる木で実際にあったトラブルは、故人が好きだった木や、親族の好みで勝手に木を植えかえたり増植してしまったケースです。
外来性の木が従来の樹木を駆逐してしまったり、モミジやツバキなどの日本古来から愛されている樹木の中に南国を代表するハイビスカスを植えて景観を損ねてしまったり、罰則はありませんが樹木墓地区画も樹林墓地も個人のお墓ではありません。
勝手に花を植えたり、指定樹木以外の品種の樹木を植えてはいけません。
区画全体が一つのお墓であることを忘れずに環境や景観を守らなければなりません。
故人を偲ぶ思い出の品は入れられません。それぞれのお墓のルールを守ろう
樹木葬は自然に還る事がコンセプトですので遺骨以外のものは埋葬できません。
遺骨は土に還りやすい素焼き、和紙、麻の骨壷や袋に収めて埋葬します。
報告されているマナー違反のトラブルに、勝手に故人の私物を埋めてしまったという報告があります。公園型の樹林墓地は一人だけのためのものではありませんし、樹木墓地もいずれは合祀により永代供養されます。
土に還りにくい故人の私物を勝手に埋めてしまうのはマナー違反です。また、里山型の樹木葬であっても同じです。里山形の場合は特に里山や自然林の維持や再生を目的の1つにしていますので環境に適さず土に還りにくいものを勝手に埋めることは重大なマナー違反になります。
樹木葬は基本的に合同葬になります。特に樹林墓地や里山形の樹木葬では複数の人が一緒に祭られていますので土に還りやすい素材だからといって勝手に卒塔婆を立てたり、故人の名前の入ったプレートを木につけたりすることはルール違反です。大抵の墓地では区画内に献花台と焼香台が用意されています。それぞれのお墓で決められているルールを守ってお参りをしてください。合葬である樹木葬ではお彼岸やお盆には同じ区画のお参りが重なることがあります。お参りが重なった時には他の参拝者に敬意と思いやりをもって接してください。しつこく話しかけたり参拝者の廻りで大声で話したり騒いだりは深刻なマナー違反となります。