出生率の低下の伴い核家族化や少子化が進む日本ではお墓を受け継ぐ人が少なくなり、無縁墓や廃墓が増えています。
また、結婚率や出産率の減少により「入るお墓が無い」人も確実に増えています。
そのような現実を受けて、継承を必要としない樹木葬、桜葬、ダイヤモンド葬、散骨などの新しい形の供養に対して関心が高まり認知度も上がっています。
樹木葬に関心が集まっている背景
樹木葬に関心が集まっている背景には入るお墓が無かったり、お墓を建てても守る人や継ぐ人が居ないという現実があります。
伝統的なお墓の継承は「長男が墓を継ぎ、次男以降は分家として新たに墓を作る、娘は嫁に行く」でした。
これは人口が増え続けている間は安定して維持されるシステムですが人口の減少により破綻します。
2006年をピークに人口が減り続け、女子の出産率も1.3人という低い数字を打ち出している日本では家墓制度は崩壊しつつあります。
さらに1960年代からの都市部への人口流出増加により「生まれ育った地で死んでいく」という伝統的なライフスタイルが変化しています。
この変化が樹木葬などの永代供養型の埋葬への関心に拍車をかけます。
都市に流出した第一世代は田舎にある先祖代々の菩提寺への帰属心も薄れつつあるようです。
都心部で生活の礎を確立している第1世代にとって遠く離れた田舎の墓を祀り、いずれはそこに入るということは現実的ではありません。
特に田舎の両親が亡くなった後は、遠い土地への墓参は時間もお金もかかります。
しかも親はもう居ないとあっては田舎への頻繁な墓参は現実的ではなくなります。
さらに都会で生まれ育った第2世代、第3世代には両親が亡くなった後、馴染みの無い田舎の土地にあるお墓を守る理由が見つかりません。
結婚や出産を経験しなかった人や子供の居ないご夫婦が終活に向けて直面するのはお墓を建てても継ぐ人がいないという現実です。
親のお墓に一緒に入るという道もありますが、一人っ子の場合は将来的にお墓を守る人が居ませんので廃墓を覚悟しなければなりません。
また、先祖代々のお墓がある場合でも兄弟のうち誰かが跡を継いでいる場合、特に跡継ぎに家族がいる場合は先祖のお墓には入りづらく「入るお墓が無い」という事態に直面します。
特に女性の場合は(残念ながら)日本ではまだまだ「女子は嫁に行く」「嫁に行ったら他家の人」という考え方が根強く残っています。
ですから一度家を出てしまうと実家のお墓に入るという選択に至るのは難しいようです。
このような事情から永代供養型の樹木葬で合祀してもらう事を考える人が増えています。
樹木葬などの永代供養型の埋葬に関心が集まるもう1つの社会現象が高齢化による家墓の無縁化や廃墓率の急上昇です。
少子化で子供の数が減少しているのに対し、男女共に日本の平均寿命は80歳を越えています。
非常に残念なことですが、長生きをすればするほど自分の死後に自分のことを知っている人がこの世に存命する年数が短くなります。
90歳以上まで生きた場合、下手をすると子供の方が先に亡くなっているなどという事態も起こります。
そうなると第3世代である孫が(存在すれば)お墓を継いで先祖代々の供養をする事になりますが、孫は核家族化が進んだ影響で3世代同居を経験していない世代です。
年に一度か二度、会ったか会わないかの「ジィジ」「バァバ」の○○回忌の法要やお墓参りをするというのは期待薄です。
たとえ跡を継ぐものが存在したとしても敢えて「樹木葬」や「合葬」などの永代供養や「散骨」「宇宙葬」などの自然に還る形の葬られ方を選ぶ人が増えています。
環境への関心が高まっている
樹木葬の認知度が高まり関心が集まっているもう1つの理由が環境への関心です。
お骨を骨壷に入れて納骨する従来の方法とは異なり樹木葬では「自然に還る」ことをコンセプトにしています。
土に還るので自然葬の一種となります。
お骨が土に還るということで、里山の再生や自然保護に貢献します。
1999年に日本で始めて樹木葬が認められた岩手県一関市の知勝院では里山の再生や保護を目的の1つとして樹木葬を始めました。
自然志向、環境志向のライフスタイルを尊重する方が知勝院のコンセプトに賛同して樹木葬を選んでいます。
しかし、公園型の樹木葬に見られるように必ずしも樹木葬が里山の再生や環境保護に特化しているわけではありません。
公園型の樹木葬は都市部でも樹木葬が行えるように整備され、桜葬に見られるような「都市型樹木葬」として定着しつつあります。
公営の霊園が2012年に樹木葬を始めたところ応募が殺到しました。
また2015年に樹木葬の募集を開始した霊園では募集3000体の8倍を超える応募がありました。
「死後は自然に還りたい」と願う人の多さが樹木葬の関心を高め認知度を上げたと言えます。
樹木葬は現代の供養の形の中でポピュラーな埋葬法と言えるでしょう。
樹木葬は基本的に自然に還るので宗旨、宗派が問われないことが多いのも感心が高まっている理由の1つです。
合祀後の法要などは樹木葬の運営母体の宗教に従って行われることもありますが、従来型の供養のようにお寺の檀家として宗教を踏襲する必要はありません。
パートナーとの宗教や宗派が異なる方や国際結婚をされた方がパートナーと一緒に眠ることが出来るのも樹木葬の注目度を上げる要因となっています。