「将来、自分が死んだら家の桜の木の下に埋めてくれ」とお願いされたとしましょう。
「そういえば、樹木葬って聞いたことあるな」「木の下に埋めるんでしょう?」「じゃあうちでもできるんじゃない?」と思ってしまうかもしれませんね。
樹木葬は、自宅の庭でもできるのでしょうか。
今回は、樹木葬と法律の関係についてご紹介します。
基本的に普通の土地に埋葬してはNG
「死体遺棄罪」(刑法190条)をご存知でしょうか。
ニュースなどで見かけますが、ご遺体を放置しておくと犯罪になります。
また、「墓地・埋葬等に関する法律」という規定があり、墓地ではない土地に、勝手にご遺体を埋めると犯罪になります。
なぜこのような規定があるのかというと、国民の宗教感情に配慮するためと、墓地に関する社会的なルールを守るためにあります。
そこら中のいたる場所に勝手に埋葬されてしまうと、たとえば水源に近いところであったりすると衛生的・精神的に良くないですよね。
基本的にご遺体は火葬がメインですが、地域によっては土葬が伝統というところもありますので、墓地ではない土地に埋葬することはダメだと決めておく必要があるのです。
納得がいきましたか?確かに、火葬した後の骨であってもそこらじゅうに埋めたらいけないということは分かって頂けたかと思います。
「じゃあ、散骨ってダメなの?」という疑問が聞こえてきそうです。
散骨はグレーゾーン
「墓地・埋葬等に関する法律」には、「埋葬又は焼骨の埋蔵は、墓地以外の区域に、これを行ってはならない。
」(4条)とあるため、散骨もダメだという議論がありましたが、法務省としては節度をもっておこなわれる限り問題はないと結論づけました。
また、散骨は骨をパウダー状にして撒くので、穴を掘って骨を埋めることは散骨ではありません。
散骨した後に、葉っぱや土をかけてもいけません。
法務省の見解の、「節度」とはどのような程度のものをいうのでしょうか。
厳密には、散骨につていて法律の規定がないのでケースバイケースです。
ただ、近くに漁場がある場合や、水源がある場合、住宅街の場合など、周辺の住民や業者が不快に思わないように合意をとっておくことが重要なようです。
墓地ができるだけでも、反対運動がおこることもありますし、実際に散骨ができる場所というとかなり限定されてくるかもしれませんね。
散骨がOKなら、樹木葬も大丈夫な感じがしたかもしれませんが、樹木葬は樹木の下に骨を埋めるので、法律に抵触してしまうことになり、NGです。
いくら生前に故人が「うちの庭に埋めてくれ」といっても、少なくとも日本国内では願いを叶えてあげるのは無理ですね(その方が墓地を経営されていれば、別ですが)。
樹木葬をしたいときは、墓地の許可を取っている樹木葬の業者に依頼してください。
散骨は、法律上は想定されていなかったことなので、現時点では散骨する側のモラルがきちんとしてれば問題ないとされており、特に規制はされていないのですが、近年散骨した上に植樹をして、樹木葬のような形をとっている業者もあります。
散骨については、現時点では規定がないというだけで、都道府県によっては条例で規制されていることもありますので、自分で散骨した上に植樹するというのは、やはりおすすすめできません。
どんな業者を選んだらいい?
法律との関係では、まず墓地に関する許可をきちんととっている業者を選んでください。
通常、樹木葬は穴を掘って骨壷や、骨を埋め、その上に樹木を植樹します。
樹木葬は散骨ではなく、埋葬に当たると一般的には考えられるので、埋葬をできる土地であることが重要です。
実は無許可で樹木葬を経営していた業者が問題となったこともあります。
十分注意してください。
また、樹木葬は樹木が重要なのですが、肝心の樹木が枯れてしまった場合にどうするのか、永代供養とは具体的にどれくらいの年数をいうのかなど、詳しく話を聞いておくことが大事です。
樹木葬という埋葬方法自体、比較的最近に普及し出したものなので、まだまだこれといった決まったスタイルはありません。
ただしその自由度合いが、現代のニーズにもマッチしていると考えられますので、まずは色々比べて、調べることが重要になってくるのです。
樹木葬を、自分で勝手にしてはいけません。
ご遺体に関する法律と、お墓に関する法律に抵触してしまう可能性がありますし、勝手に自分の庭に樹木葬をすると犯罪になる可能性があるだけではなく、ご近所とのトラブルになってしまう可能性も否めません。
樹木葬をしたい場合は、必ず墓地に埋葬してくれる業者を選んでください。
散骨は法律上、グレーゾーンです。
散骨した上に植樹をするのは樹木葬ではありません。
故人の意向だからといって、うっかり法律違反にならないように気をつけてくださいね。